ペトリコール

すきなことだけ

38

過去を振り返ることが多かった一年だった。

 

就職活動中、ずっと自分とは何かを考え続けていたと思う。自分のどんなところを知ろうとしているのか、それが中々掴めなくて苦しかった。

 ある日面接の練習をしていた時に、担当の人に「自分のことが分かりません」と言った。「自分のことが分かりません、今までどうやって生きてきたのか、これからどうやって生きていきたいのか、自分がなりたいのはどんな人なのか、わからなくなりました。」そんなことを言った。頑張れ私!頑張れ!と沢山呟いて、おまじないのように、自分を殺すように走ったが、結果は、あまり思うようについてこなかった。頑張れってなんなんだろう、頑張れてる?頑張った?って自問自答を繰り返していた。だから、なんとなく祈るような気持ちで呟いたように記憶している。

 

そんな私を見て、「そうだなあ…じゃあ質問を変えよう!あなたは、嵐の中で誰が好き?」と聞いてきた。あまりにも唐突だったので、きっと私は驚いた顔をしていたと思うけれど、「えっと…にのみやくん…です。」と答えた。「ニノね、なんで?なんで好きだと思ったの?どんなところが好き?」なんで好き?なんで…?いや、もう何が好きとかどこが好きとか、そんなこと考えるところを超えてしまって、全部、全部好きなんだよなあ…この世界で、いや人類で一番二宮和也さんが素敵だと思って生きてきたからな…と思いながら、「限界を作らないで、マルチになんでもできる…しようとするところです」と答えた。いつも最初から物事を決めつけたりしない、その姿がとても好きだと思う。目の前のことに真摯に向き合う。仕事を楽しいと口にする。そんなところが憧れで、好きだといつも思っていた。

それに彼女は柔らかく笑ってこう返した。「そう、ニノのことがとても好きなのね。あなたはそんな人になりたいと思っているんじゃないかな。そんなふうに生きていきたい、そんな人が信頼できる、と思っているんじゃない?」

 

 

 

 

 

この頃読んでいた本に印象的な言葉があった。

 

「わたしはね、信頼できる仕事をする人がすきなの」「わたしが信頼するのは、すきとか恋愛とか愛とか──そういうところから出発するようなものじゃなくて、まずその人の仕事にたいする姿勢であるってことなの」「そこにはね、その人の全部があらわれるんだって。」 

 

 

 

「信頼した分、わたしも相手に、何かをちゃんと手渡しているって、そんなふうに感じるの。」「自分の人生において仕事というものをどんなふうにとらえていて、それにたいしてどれだけ敬意を払って、そして努力しているか。あるいは、したか。わたしが信頼するのは、そんなふうに自分の仕事とむきあっている人なのよ。」「そして、そういう人に向けられたすきという自分の気持ちを、わたしは信頼しているところがあるの。だから、すきとか愛とか──まあ愛というもののことについてはあまり考えたことがないけれど、最終的に残るのはそんなふうにいつか変質したり単純に消滅したりしてしまうようなものじゃなくて、やはり信頼なのよ」*1

 

 

 

2020年6月、サプライズで誕生日をお祝いされることに気づかずに必死に自分の仕事を確認しているにのみやくんがいて、思わず泣けてしまった。7月、突然始まったスイーツ部とにのちゃんを探せ!に振り回される日々。8月、「この人たちがいないと…」と語るにのみやくんを見て、この表情をずっと見ていたくて、この声を聞いていたくて、私はここにいるんだと強く思った。9月、「やりたかったこと全部できなくなっちゃった」っていう声を忘れることができなかった。10月、アラフェスを間近で見たいファンもいるんじゃないかっていう質問に「それは我々だけじゃなくて、コンサートを応援している人はみんな思うことですもんね」と答えるところを見て、こっそり泣いた。11月、「嵐が世界一のショーです」と語るその顔がどうしようもなく宝物だった。12月、歌って踊って笑って、ステージの上で光る彼が、どんなものにも代えられない、私の人生の真ん中だった。

2021年1月、変わらない姿でテレビに立つにのみやくんを見て、心がすっと軽くなった。2月、ミッキーの耳をつけるところを見てやっぱり大好きなアイドルだ〜〜って心が躍った。3月、アカデミー賞のレッドカーペットを歩く姿を見て、胸がいっぱいになった。4月、YouTube始動!?!?ってザワザワして、あ〜同じ時間を生きているんだなあって嬉しくなった。5月、本格的にYouTubeが始まって、好きを形にできるその姿にまた信頼を強くした。

 

 

 

誠実に仕事に向き合って、好きなものには丁寧に愛を捧げる。そしてその行為を素晴らしいものだと体現してくれる。今死んでもお釣りが出る人生、これ以上ない人生、そうやってアイドルとしての人生への肯定の言葉をくれる。周りの人への感謝を忘れない姿。「仕事を楽しいと思っちゃいけないのかもしれないけど(笑)」って笑う。「大丈夫 ここにいる」と歌う。仕事に敬意を払い、努力し、向き合うそれら全てが、わたしが彼みたいに生きたいと思う憧れの所以であり、彼に抱く信頼なのだと思った。

 

 

小学生の私も、中学生の私も、高校生の私も、大学生の私もにのみやくんに救われてきたのに、この先どうなるんだろうねって不安になったりもしたけど、やっぱりにのみやくんはちゃんと変わらない温度で“そこ”にいてくれて、嬉しいも楽しいも共有してくれて、おいていかない速度で、歩いてくれている。仕事に対する向き合い方から、私はこの人を好きでいてまちがいないんだ、と思わせてくれる。こんなふうになりたいな、と思わせてくれる。だから現在進行形で好きを抱き続けていられるんだろうな、ってまた一年前と同じ気持ちを抱いているけれど、その変わらなさが好きの──信頼の理由なんだろうなと思う。そしてまた今年もそう思えて嬉しい。

 

 

 

37歳のにのみやくん、両手で抱えきれないほどの特別をくれてありがとう。

そして、にのみやくん、38歳のお誕生日おめでとうございます。

 

にのみやくんが歩く道が、にのみやくんが選ぶ道が私の見たい“アイドル二宮和也”だから、これからもその一瞬一瞬の目撃者になり続けたい。アイドルにのみやくんが完成する…ことはもしかしたらないのかもしれないけれど、変わらず、その道を見続けられたらいいなと思う。

 

 

私の方は相変わらず仕事は全然だめで、悔しくて、どうしようもない毎日だけど、YouTubeで大切な後輩におめでとうを届けるために奮闘するにのみやくんを見ては、またにのみやくんが変わらない温度で画面の向こうで笑ってる〜(泣)ってそれだけで救われて、こうやって笑えるならまだまだ人生大丈夫かもしれないななんてぼんやり思った。そんな信頼を見つめて守ることしかできないけれど、それも全部奇跡だ。画面を見つめながら、最高、大好き、特別な光だって思いながら見つめる、その毎日が奇跡みたいに眩しい。この一年も、彼に抱く信頼を大事にできますように。彼の仕事への信頼にまっすぐに向き合って受け取ることができますように。そして仕事に敬意を払って、誠実に向き合う彼に向けられたすきという自分の気持ちを、守り続けていけますように。

 

「自分のことが分かりません」と言ったあの時の私の中にはちゃんと大好きな人への大切な守りたい宝物のような“信頼”があったよ。消えることの無い信頼。いろんなものがなくなってもちゃんとそこに残る信頼。それが身体の真ん中にちゃんとある。だからわたしは歩いて行けるのだ。変わらず、目の前に輝き続ける月みたいに光るにのみやくんを見つめて、顔を上げて、目印にして、歩いていきたい。

 

 

まだまだ新しいにのみやくんに出会える一年、いっぱい楽しもうね。

そしてまた来年も、お祝いできますように。

 

*1:「すべて真夜中の恋人たち」より